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無題⑧

いつになったら終わるのか~~~@@

つづきです。
最初から読みたい方は無題①へGO!!

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 そう言ったまま再び顔を覆い、震え泣く俺を河崎浩子は力強く抱きしめた。しかしそこに先ほどの母親の様なそんな優しさはなかった。恐らく脳裏に浮かんだ疑問を確たるものにしていたのだろう。
 「俺が・・・俺が殺したんだ・・・」
 取り乱す俺とは対照的に彼女は冷静な声で言い放った。
「違うわ。あなたじゃない」
 確かにそう言った。しかし取り乱しきっていた俺には、その言葉自体が理解できないでいた。
「しっかりしなさい!いい?あなたの父親がここに立っていた。そして、シンクには包丁がおいてあった」
 そう言いながら河崎浩子はバッグの中から飲みかけのお茶が入ったペットボトルを出し、シンクの上に倒した状態で置いた。
「こんな感じかしら?」
「たぶん・・・」
 俺は、自信なく小声でそう答えた。すると彼女はあの時父親が立っていたと思われる場所に立ち、あの時を再現しだした。
「かなり酔っていたあなたの父親に、当時5歳だったあなたが力いっぱいぶつかった。彼は後ろに倒れまいとして一歩また一歩と足を後ろに運んだ・・・。おっとっと・・・」
「あ!」
 ドンッと音を立てシンクにぶつかる彼女を見て思わず声を上げた。その瞬間、そこにあったペットボトルが彼女の背中に弾き飛ばされ、くるくると回りながら壁にぶつかり止った。
「わかる?」
その問いに眉をひそめ黙り続ける俺にあきれた顔をして、彼女は鼻からため息を漏らした。
「ここに固定でもしていない限り、この包丁は背中には刺さらないのよ!!」
俺は、一瞬にして目が覚めた。そこへ彼女の言葉が覆いかぶさる。
「さらに、前のめりに倒れたその背中に包丁が刺さっていたと言うことは?」
「と、いうことは・・・」
 混乱する頭をフル回転させて出した答え。それは、
「他に誰かがいたってことか?」
 俺を見つめていた河崎浩子の目が鋭い眼光を放った。
「そんな・・・そんなばかな・・・」
 まったく思い出せなかった。と言うより、今日一日でこんなに多くの記憶を取り戻した俺の頭ん中はパンク寸前だった。
「今日はこのくらいにしましょう」そう言って腕時計に目をやり、
「この時間じゃ、泊まる所も探せないわね。終電も行っちゃったし・・・」
 河崎浩子は部屋の押入れをおもむろに開けた。
「十年前の布団だけど、使う?」

 物音ひとつない静かな夜だった。ただひとつ彼女の寝息を除いては・・・。押入れから出した一枚の掛け布団にくるまり、河崎浩子は寝入っていた。こんな状況で寝れるなんて、女と言う生き物の恐ろしさを身近に感じた反面、ある意味うらやましくも思った。それでも彼女がそこにいるだけで随分と気がまぎれる。そう思うと、急に愛おしくも感じた。そっと寝顔を覗き込む。
「いや、ちょっと待て。何を血迷っているんだ、俺は?もともと俺の思い出さなくてもいい過去を無理やり思い出させたのはこいつじゃないか。考えてみたら一生知らずにいた方が俺にとっては幸せだったのかもしれないんだぞ」
「いや・・・。遅かれ早かれ彼女とは関係なく思い出していた可能性もある。であれば、やはり感謝するべきなのだろうか?」
「いや、今日思い出したことは、本当に俺の過去で、実際にあった事柄なんだろうか?」
「もしかしたら、こいつに誘導されて・・・?」
「何のために?」
 俺の頭はパニック状態へと引き込まれそうになった。その時、目の前にあった川崎浩子の両目がそっと開いたかと思うと急に生気を放ち、間髪いれず平手打ちが飛んできた。
「何やってんのよ!バカ!」
 そうだった。一瞬とはいえ愛おしく思いながら寝顔を覗き込み、そのままの状態で考え込んでいたのだ。
「ちがっ、誤解だ!」
 彼女はキッと俺を睨みつけると、何も言わず背を向け布団にもぐり込んでしまった。もう何を言っても聞き入れてはもらえなかった。しばらくすると彼女から安らかな寝息が聞こえ、俺は全身の力が抜けうな垂れた。
 結局、一睡もできなかった。 

 

無題⑨へGO!

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