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無題④

続きじゃぁ~~~@@

 あの日を境に頻繁に見るようになった夢と、河崎浩子の存在は俺の内側を揺さぶり続け、いつの間にかひとつの言葉に行き着いていた。
――― 俺の知らない過去 ―――
 そして俺は、信じられない行動に出た。


 ――― 退部願い ―――
 「退部などとは、絶対に許さぁん!!」
 学校中に中谷先生の声が響き渡った。などと言うことがあるはずはないが、それほど大きな声だった。
「なぁ、日暮。お前、優勝候補の一人なんだぞ。全国だって狙えるそのくらいの力はある。それに、このままいけば、卒業後の進路だって―――」
「分かってます」
「分かってて何故?」
 同じ会話がしばらく続いた後、頭を抱え、ため息まじりで休部の許可をくれた。俺は頭を深々と下げ職員室を出た。正直言って辞めたくはなかった。しかし、それ以上にやらなければならないことを見出してしまったのだ。「本当にいいのか?」葛藤し続ける俺の顔は徐々に険しくなっていた。

 「おい、水泳やめるってホントかよ?」
 泳ぎ納めと思いプールサイドに立った俺に、輝が飛び掛った。危うくプールに落ちそうになった。
「辞めるんじゃない。休部だ」
「どっちでも同じだ」
 そう言った顔は、いつになく険しかった。
「何か、あったのか?」
 即座に尋ねると、輝はうつむきしばらくの間黙っていた。やがて『ニィッ』といつものおちゃらけた顔を見せ、おもむろに近付いたかと思うと、耳元に言葉を残しそのままプールに落ちるように飛び込んだ。
「嘘だろ?」 
 今度は俺の顔が険しくなった。
――― 青森の学校に転校する ―――
 受け入れられない言葉だった。輝がいなくなるなんてこと考えたこともなかったし、そう告げられた今も理解ができない。
「なぜ!?」
 考えるより先に言葉が突いて出た。
「親父の体の具合が悪くなってさぁ、、家族で親父の実家の近くに住むことになったんだ。じいちゃん家自営業だし、親父も手伝いくらいはできる。いざとなったら俺が高校辞めて働くこともできるしさっ」
 そう言って、コースを泳ぎだした輝を、俺は小走りに追った。
「いつ?いつ行くんだ?」
 水しぶきを上げて泳ぐ輝に大声で尋ねた。その声が届いたのかどうか。輝はちらっと俺に視線を合わせたあと、そのままターンしてコースを折り返した。俺は、すぐさま隣のコースに飛び込み輝を追った。既に10メートル以上の差がついていた。それでもかまわず追い続けた。一足先にターンした輝の視線を感じた。「抜いてみろ」そう言っているように感じた。俺は輝を追い続けた。差が少しずつ縮まっていく。何度折り返しただろう。手足が制御不能でどんなフォームで泳いでいるのかすらわからない。それでも輝は止まりはしない。指一本の差で折り返し、泳いでいった。
「畜生!!これで最後だ。」
 そう思ってターンした。しかしその差はいっこうに縮まることはなく、むしろそれを境に徐々に広がっていった。それから3回折り返したところで、俺は音をあげた。手も足も感覚がなく、コースロープにつかまったまままったく動けなかった。それは輝も同じだったようで、俺より50メートル長く泳いだ反対側で同じようにロープにつかまり、酸素を求め息を荒くしていた。
 これが輝とともに泳いだ最後の日であり、俺の水泳人生の最後の日ともなった。悔いも、惜しみもなかった。また輝に助けられたのだ。
 翌日、輝の姿は学校になかった。

続き

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