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鉄槌(小説部企画作品)

私の所属するブログ小説部『企画発信室』に投稿した小説を
こちらにもアップしてみたくなり、
いきなりですが、
やっちゃいました!!

Porno Graffitti さんの楽曲より。

『鉄槌』

 とんでもない夢から目を覚まし、僕は朝の身支度をして外へと出た。
 突如黒いスーツを着た男たち数人に取り囲まれ、わけも分からず連行された。
そしてなにがなんだか分からないまま僕はブタバコ(留置所)に放り込まれた。どうやら黒いスーツの連中は警察官だったらしい。
 狭く殺風景な箱の中で呆然と立ち尽くす僕の後ろで、鉄格子の閉まる音が鳴り響く。

 その音とともに、僕は夢から覚めた。
「ふぅ―――」
 夢見の悪い朝。僕は重い頭を起こし鏡の前へ立った。ボーっと自分を見つめたあと、右手で髪をクシャクシャッと掻き、うなだれた。
「昨日飲み過ぎたかな?」思い起こそうとして、やめた。
 気だるさをあらわにしながらネクタイを締め、スーツを着、髪を整えると、幾分シャキッとした。それでも許してもらえるならこのまま布団に戻りたい。そう思いながら玄関へ出て靴を履くと、重い扉を開いた。
 「朝日が眩しい」と思った瞬間、その朝日を遮る何かが僕の前に立った。
「最上茂木さんですね。ちょっと署まで同行願います」
 あまりに突然のことに、相手が何を言っているのか分からなかった。
「えっ?あの?はっ?」
 抵抗する術も忘れ、僕は黒ずくめの男たちに囲まれ連れて行かれた。その様子を一人の男が見ていることに気付いた僕は、とっさに頭を下げ、前かがみになって、その男に顔を見られないようなしぐさをとった。そして僕は、警察署に連れて行かれた。
 署に着くと僕はそのまま取調室に入れられ、
「お前がやったんだろ?」と半ば脅しのような叫び声を浴びせられた。
「やってない!」僕には何のことだかサッパリ分からなかったが、否定するしかなかった。そうでもしないと、このまま犯罪者になってしまう。
 「こんばんはここへ泊まってってもらうよ」
 ひとりの警官がそう言って、嫌がる僕を無理やり檻の中に突き飛ばした。前のめりになりなった態勢を急いで元に戻し振り向くと、警官はその鉄格子に鍵をかけていた。
「やめろ!出してくれ!俺が何をしたというんだ!!」
 叫び声も虚しく、警官はカッカッと靴音を鳴り響かせて去ってゆく。そして暗闇の向こうで鳴り響いた扉の閉まる重い音とともにその靴音は消えた。
「出せ!出してくれ!!」
 
 その叫んだ自分の声に驚き僕は目を覚ました。まだ心臓の音が鳴り響く嫌な夢だ。僕はこの嫌な気持ちを取っ払いたくて、すぐさま洗面所へ向かい、冷たい水で顔を洗った。
「パァッ」
 水で濡れた自分の顔を見つめ、喝を入れるために両手で頬を叩いてみた。
「しっかりしろ!!」
 今日は大切な会議がある。僕はビシッとスーツできめて、大切な書類片手に会社へと向かった。
 「おはようございます」
「ん。おはよう」
 僕に頭を下げる部下たちに、紳士的に挨拶を返しながら、会議室へと向かった。
 会議室に着くと僕は、扉の前で一呼吸おき、そしてさっそうと扉を開けた。その瞬間、僕はいきなり左手をつかまれ、冷たい衝撃を手首に受けた。
「何のつもりだ?」
 僕は左手にかかった手錠を見つめそう叫びながら周りを見渡した。十数人の背広を着た男達が一斉にこちらを睨んでいた。
「最上茂木、逮捕状だ」
「は?何のことだ!?」
 身に覚えのないことに困惑し抵抗する僕を男らは無理やり連行しだした。会議室から出される瞬間に出口付近に知っている顔を見つけた。
「森山!!」
 助けを求めて、僕は叫んでいた。
 会社中が大騒ぎになってゆく中、僕は黒い車に押し込められ、強制的に連行された。
 取調室では、何度否定しても受け入れてもらえず、平行線を辿った。
 二日後の夜、ようやく取調べから開放され、独房の中へと放り込まれた。
「ガン!」閉ざされた扉を感情的に思いっきり蹴飛ばすと、あまりの痛さに僕はうずくまった。

 足の指をさすっている最中に夢から覚めた。
 布団の中、身体を丸め、僕はなぜだか苛立っていた。この苛立ちから少しでも開放されようとテレビをつけたその時、「ピンポーン」っとチャイムが鳴った。
「誰だよ、こんなに朝早くに!!」
 僕は一層増した苛立ちをむき出しにしたまま「はい!どちら様!?」と、扉を開けようとした。僕が扉を押すのが早いか、相手が引くのが早いかというくらいの勢いで扉は開き、次いで数人のスーツ姿の男たちが押し入った。
「何です!?」
 僕は叫んだ。
「最上茂木、殺人死体遺棄容疑で逮捕する!」
 そう言って令状を見せると、僕に向かって飛び掛ろうとした。僕は慌てて身をかわした。すると今度はその倍の人数が飛び掛った。
「やめろ!僕が何をしたって言うんだ!?俺じゃない!!俺じゃない!!」
 僕は叫び、抵抗もした。しかしどうすることもできず、外へと連れ出された。家の外はパトカーや警官、そしてやじ馬でいっぱいだった。僕は抵抗をあきらめた。警官に言われるがままに歩き出したその時、ふと目をやった先に森山が立っていた。僕が立ち止まり睨みつけると、彼はゆっくりと口元を緩ませ、ほくそ笑んだ。そしてフッと鼻で笑うと彼は静かに立ち去った。僕はそのまま黙って車に乗り込んだ。
 取調室では僕は容疑者ではなく、犯人扱いだった。
「俺じゃない。森山という男を調べてくれ!何か知っているはずだ」
 何度もそう言うと、目の前の警察官が衝撃的なひと言を言った。
「お前はその森山殺しでここにいるんだ」
「え?」

そして、僕の刑は確定した。
「―――無期懲役を言い渡す」
 僕にはもう何も聞こえなかった。

「今日からここだ」
 そう言って開かれた鉄格子を、僕は静かにくぐった。そして振り返ると、錠の落ちる音が静かな空間に響き渡る。僕は静かに目を閉じた。頬をつたう涙が温かい。僕はその場に崩れ落ちた。
「僕は何もしていない。何も・・・」

 目を開くと僕は、自分の部屋の布団の上に横たわり泣いていた。
―――ピンポーン―――
 何度も鳴り響くチャイム。僕は布団の中に潜り込み丸くなった。
―――ドンドンドン―――
玄関の外が騒がしい。やがてドアを蹴破る音がし、いくつもの足音が僕の潜る布団を取り囲んだ。
「最上茂木!!殺人死体遺棄容疑で逮捕する!!」
 布団を剥ぎ取られ、手錠をかけられると僕は引きずられるように連れられていった。
 パトカーの中、僕は疲れ果て、意識は朦朧としていた。

――― 一体、いつになったら抜け出れるんだ?――-

 僕は肩を叩かれ、我に返った。交差点で信号待ちをしていた僕は、いつの間にか黒いスーツ姿の男たち数人に取り囲まれていた。
「最上茂木、森山トオル殺害および、死体遺棄容疑で逮捕する」
 僕のシワ枯れた右手は高々と上げられ、そして、手錠がかけられた。
「あと、数年。あと数年で、終わる」
 パトカーのルームミラーに映った自分の年老いた姿を見つめ、僕はそう呟いた。

「最上茂木、森山トオル殺害および死体遺棄容疑で、逮捕する!!」

                        END

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