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サボテン(小説部企画作品)

小説部企画発信室

企画第一弾 

~ポルノさんの楽曲からイメージした小説を作っちゃえ~

第5号です。

今回は『サボテン』

コミカルタッチで始まりますよ~。

お楽しみにぃ  v(^0^)v

***************************

『サボテン』

 バタン!!

 扉の閉まる音だけを残して、なつみは部屋から出て行った。ベッドにひとりぽつんと座り、直紀はじっとしていた。

 ――― 追いかけないのかい? ―――

 雨の降る中なつみは傘もささずに行ってしまった。今ならまだ間に合う。だけど直紀はじっとしていた。泣いているのか?

 ――― さぼてんビーム!! ―――

 僕はふざけて想像してみた。直紀に向けて、僕の棘を浴びせまくる。

届かない・・・。

今度は一発、勢いよく 「ぷっ」

おっ!後頭部直撃!!

ぎゃはははっ。ざまあみろ!なつみを追いかけないからだ。

その瞬間、直紀が僕を睨みつけた。

えっ?うそ。本当に飛ばしてなんかないよね。って言うか、飛ぶわけないじゃん。

僕はうろたえた。

直紀はおもむろに立ち上がると、台所に向かって行った。

 ――― ??? ―――

戻って来た直紀の手にはヤカンが・・・。

ちょっちょっと待って!冗談だって!冗談!!
お湯なんかかけられたら僕は枯れてしまう。
やめてーっ!!ごめんなさい!!
そんな僕の叫びは直紀に届くわけもなく、
直紀は手にしたヤカンを僕の頭上に持ってきた。

 ――― あ゛ーっ ―――

 僕は人間で言うところの『目』を閉じて、そして『死んだ』と思った。
 「なぁ、俺たち何でこうなっちまったんだろうな」

 ――― ?生きてる ―――

 僕はそっと目を開けてみると、直紀が片肘ついて僕に水をかけながら呟いていた。この行動パターンはなつみがよくやっていたっけ。

 「今日ね、直紀の誕生日なの」

 「直樹、帰ってこないね」

 「最近、直紀つめたいんだよ」

 「あーぁ・・・。何でこうなっちゃったのかなぁ」

 話しかけてる間中、水をかけられてた。時々やけにしょっぱいこともあったけど、僕はいつも笑顔を絶やさなかった。いや、僕には顔はない。つまり元気に、生き生きと立っていた。そうすることで、なつみが元気になってくれるなら。僕を雑貨屋の片隅から救い出してくれた、あの頃の2人にに戻れるなら・・・。
 僕はやるせない気持ちで、直紀を見上げた。直紀は黙って僕に水をかけ続けていた。鉢の水受け皿から、とうに水が溢れ出していた。

 「お前は優しいな」

 ヤカンの水が尽きると、直紀は僕に向かってそう言った。

 「こうやって いつも、なつみはお前に何を話していたんだい?」

 直紀の顔が今日の空よりもひどく曇った。

 「俺、何やってんだろう。なつみがいてあたりまえだと思ってた。あいつのこと何も考えてなかったな。俺だけ好き勝手やって楽しい思いして。どこに行っていても、何日留守にしても、帰ればなつみが待ってくれている。それがあたりまえだと思ってた。バカだな、俺」

 雨足がさっきより強くなり始めた。

 ――― バカヤロウ!何してんだよ。分かったんなら、さっさとなつみを追いかけろよ!!―――

 この想いが届いたのかどうかは分からないが、 直紀は近くになつみがいないか窓越しに外を覗き込んだ後、空を見上げた。

 「あのバカ、風邪ひくぞ!!」 そう叫んで傘を手にすると、急いで出て行った。その急ぎ具合は、扉の閉まる音で分かる。部屋が壊れるかと思った。
 そして部屋には誰もいなくなった。雨の中、傘を握り締めたままなつみを捜す直紀を、僕は安心して見送った。きっと2人で帰ってくる。僕には分かる。だって僕はずうっとここで、こうして2人を見てきたのだから。
 いつの間にか外の雨もあがり、雲の切れ目から薄日が漏れ出した。そのひかりを身体いっぱいに浴びながら、僕はここへ初めて来た日のことを思い出していた。

 「サボテンの花、見たことある?」

 「ない」

 「よし、俺がこのサボテンに花を咲かせてやる」

 「ほんとに?楽しみ~。よく見るとサボテンって可愛いね。いたっ!!」

 「バカだなぁ。どれどれ見せてみろ。いたいのいたいの・・・」

 「ちょっとぉ、バカにしないでよぉ!!」

 笑いが絶えないあの頃の2人のことを。

                                   (おしまい)

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コメント

すげぇ・・・もしかして、runtarouさんの一日は24時間以上あるのでは?企画発信室の管理やりながら、自ブログやりながら、こんなことも考えてたのね!?
可愛いわぁ。。このサボテン♪視点が違うから、なつみと直紀を俯瞰で映している感じ!
好きだわ☆

投稿: のぐりん | 2006年4月15日 (土) 10時39分

笑っちまった。「サボテンビーム」。あのCM思い出したよ。なんやっけ?電話の少年にビームたばすの。知らん?
可愛らしい二人、明るい未来が待ってそうおだね★

投稿: 羽音 | 2006年4月15日 (土) 11時16分

**のぐりんさんへ**
そうですね…27時間くらいでしょうか?
んなわけない。やりたいことに優先順位つけてその順にやってるだけっす(^^)
だから、一番嫌いで命に関わらない部屋の掃除は…。
部屋が汚い人って、仕事の能率が上がらない人なんですよね。
そのとおり(><。)
反省します。
がんばります。

褒めてくれてありがとう。きっと『サボテン君』も嬉しさのあまり「さぼてんビーム」を空に放って、さんさんと浴びていることでしょう(^0^)

投稿: のぐりんさんへ | 2006年4月17日 (月) 00時01分

**ネエさんへ**
そんなCMあったっけ?
きっとみれば思い出すんだろうなぁ。
老いぼれた脳では、
記憶をたどるのも面倒ですぅ。
そんなruntarouに
「さぁぼてぇーんっ、ビィィィーム」
「あいたたたっ!こんな事で若返るかーっ!眉間にしわ寄るだけじゃー。脳みそはツルツルのままじゃて」

投稿: ネエさんへ | 2006年4月17日 (月) 00時10分

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