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天気職人(小説部企画作品)

この物語は、小説部企画発信室の企画第2段

ポルノグラフィティの楽曲

~『天気職人』 からイメージするストーリーを作っちゃえ~

に参加している作品です。

 <本文>

 「赤点。落第じゃぁっ!!」

 「ってことは?」

 「人間界へ行って、しばらく修行して来い!!」

 「え゛ーっ!?そっそんなぁぁぁぁぁっ」

――――――― 天気職人 ―――――――――

 「由舞(ゆま)ぁ。またあいつ空見てるよぉ。」

 美智(みち)がそう言って私に目配せをした。

いつからだっただろうか。

学校の帰り道、通り沿いにある川原の土手の途中で、

悲しげに空を見つめる少年を見るようになったのは。

 「ねぇ、今日こそあいつに声かけてみようよ」

 美智は彼に興味津々だった。

 「いやだよぅ。変な人かもしれないし」

 そういって身を引くと、美智は「じゃぁ、ここで待ってて」といって

少年の傍へ小走りで向かった。

いきなり声をかけられた少年は、おどおどした表情で後ずさりしながら、

チラッとこちらを見るといきなり背を向け、走り去ってしまった。

 「ちぇっ。何にも聞けなかった」

 そう言いながら美智が戻ってきた。

美智には何も聞こえなかったのだろうか。

彼は確かに言った。

 「帰りたい」

 その日を境に、彼はそこから姿を消した。

紹介し遅れたが、私と美智は市内の私立高校に通う現役の女子高生。

恋多き年頃。17歳。

毎日通う道のりで唯一の楽しみ、

それは別の高校に通う男子生徒とすれ違う瞬間。

もう胸が張り裂けんばかり。

いるの、いるのっ。すごくかっこいい彼が。

美智は「告っちゃえ」って軽く言うけど、

そんなことできるわけがないじゃない。

 「もう!由舞見てると、イライラする」

 思ったことは即行動に移さないときがすまない美智からしてみれば、

歯がゆくて仕方ないらしいのだ。

私としては、この毎朝のドキドキする気持ちだけで十分なのだけれど。

 そんなある朝、

思いもかけない出来事が起こった。

 「前から気になってたんだ、今日もしよかったら、6時に○○公園入り口まで来てくれる?」

 そう言って私の目を見つめているのは、毎朝見てきた片思いの彼。

 ――― えぇっ?うそぉ!ホントにぃ? ―――

 私はどう返事をしたのか、まったく覚えていない。

授業も1日うわのそらで、頭に浮かぶのは今朝の彼の顔だけ・・・。

だって○○公園って言えば、有名なデートスポットよ。

噴水と花壇と遊歩道。

管理が行き届いているから、とってもきれいな公園。

 「何ニヤついてんのさぁ」

 一部始終を知っている美智が、私の両頬をつまんで左右に引っ張った。

 「イッターイ」

 そう言いながら、ふやけた顔をしているであろう私の顔を想像して、

より一層目じりを下げた。

 「ねぇ、今日用事あるから付いてってあげれないけど、ホントに大丈夫?」

 「だーいじょうぶ、だいじょうぶ!」

 いつもなら大丈夫なわけがないのだけれど、

今日は違った。自分でも不思議なくらい行動的になっていた。

そして、夕方。5:30。

5月にもなると日はかなり長く、7時ごろまで明るい。

学校帰りに直接公園に向かった私は、少し早すぎると思い、

公園の手前の交差点でわざと右に曲がった。

浮かれていた私は前を見ず歩いていた。

いや、厳密に言うと前は向いていた。

ただ、うわのそらだった。

誰かにぶつかって、この道が私の専用道路でないことに気が付いた。

「イッタァ。ごめんなさい」

私は深々と頭を下げた後、相手の顔を見た。

すると驚くことに、目の前にいるのは川原の土手で空を眺めていた、

いつかの少年だった。

 「あっ。」

 少年は何か言いたげだったが、すぐに口を閉じた。

それでもなぜか声が聞こえた。

 『帰りたい』

 立ち去ろうと背を向ける少年に

 「どこに・・・帰りたいの?」

 そう声をかけると、少年はピンと背筋を伸ばし、そしてゆっくりと振り向いた。

 『僕の声が聞こえるの?』

 ピクリとも動かない唇から、再び聞こえる声。

 「うん。この前もそういってたよね、帰りたいって」

 少年は、今にも泣きそうな顔で私に近づくと、

いきなり私を抱きしめて叫んだ。

 『やっと見つけたぁ』

 「ちょっ、ちょっと待って」

 ――― 今日は、男が寄ってくる日なの? ―――

 っで思い出した。約束の時間・・・。

 急いで時計を見ると、すでに約束の時間を10分オーバーしていた。

 「あっ、ごめん今日はゆっくりしていられないの。またね」

 どこの誰かわからない少年にそう言って、私は公園の入り口に急いだ。

 「はぁはぁ」

 息を切らしなかなか辿り着かない目的場所を見ると、

彼が腕を組んで待っているのが見える。

私は必死に走った。

 「ごめんなさい。遅れちゃった」

 「もういいよ。終わっちゃったから」

 「えっ?」

 乱れきった息のまま彼の方を向くと、

一人、また一人と同じ制服を着た男子高生が歩み寄ってくる。

 「あっれ~っ、来たじゃん」

 「けど残念時間切れ」

 「払えよ千円」

 「来たからいいだろ?」

 「ダメー。遅刻は来なかったのと同じ」

 「えーっ?せめて半額」

 目の前で繰り広げられる私を無視した会話は、私を惨めにさせた。

 「どういうことですか?」

 「どういうことって、こういうことだよ」

 私は、賭けの対象になっていた。

誘った女が待ち合わせ場所に来るか来ないか。

それだけのために私は呼び出されていたのだ。

 「あっれぇ?もしかして本気だったの?」

 目の前の男子5人が一斉に笑った。

悔しかった。悔しくって涙がにじんだ。

けれど、こいつらの前では絶対泣かない。

ぐっと歯を食いしばり全員を睨みつけると、その場を歩いて去った。

背中に今もなお笑い声が突き刺さる。

彼らの声が聞こえなくなると、こらえていた涙がセキを切って溢れ出た。

声を出さないようにするのが精一杯で、うつむき立ち止まって泣いた。

行き交う人が、チラチラとこちらを見ながら去っていくのが分かる。

恥ずかしかったが、どうすることもできない。

そんな私の傍に誰かが立ち止まって言った。

 『泣いているの?』

 その声はまさしく、あの少年。

私はあふれる涙を止めるすべを知らず、顔を上げ懸命に笑顔を作ってみた。

沈もうとする太陽に照らされた顔は、さぞかし酷いものだっただろう。

 「何でこういう時に降らないのかなぁ。雨・・・。」

 『?』

 少年は不思議そうな顔をした。

私は泣きじゃくりながら続けた。

 「涙が消えるでしょ」

 『!!』

 暗い顔しか見せなかった少年の表情が一瞬明るくなり、

そして両手を広げ空を仰ぐと、何かを叫んだ。

少年の見つめるその先、空のはるか彼方を私も一緒に見つめていると、

突然私の顔に、ポツリと冷たいものが落ちた。

 「雨・・・」

驚いて少年の方を見ると、彼はもうどこにもいなかった。

ザーッという雨の音がなんとなく心地よく聞こえていた。

 『ありがとう』

 空からそう聞こえた気がした。

――― 今日あった出来事は、この雨とともに流してしまおう ―――

             *

 「おはよー」

 「おはよう」

美智の元気な声に、私の声も思わず大きくなる。

美智には昨日のうちに、公園であったことを電話で話しておいた。

まるで自分のことのように怒ってくれる彼女を私がなだめ、

いつものように学校へ向かった。

当然、あのいけ好かない男子生徒に合うわけだが、

なぜか何の感情も起こらず、あっけらかんとした私の態度に、

彼の方が小さくなっているようにも見えた。

私は昨日のことなど、もうどうでもよかった。

それよりも、心に響き渡るあの得体の知れない少年の声が、

気になってしょうがない。

*************************

 「よし、合格じゃぁ。これからは天気職人として、日々精進するのじゃぞ」

 「はい、ありがとうございます。師匠!」

 天界人の衣装を身にまとい、天気の番人として一人前となったあの少年が、

自分をここへ帰してくれた由舞をひいきに天気を変えることなど、

容易に想像できたが、

それでもそれが、いつか全ての人のために天気を操れる

『天気職人』としての第一歩であることも師匠は知っていた。

「今は多めに見てやるとするかのう」

今日の空は、新しく就任した『天気職人』の気持ちそのままの

快晴だ。

                おちまい

目次へGO!

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コメント

お帰りっ!HAPPY-BOXみてたよ~。
しかも、こんないいもの書いちゃって、すごいじゃん。うう、正直、不思議です。RUNTAROUは一日何時間寝てるのか、はたまた一日が30時間なのか。
それににしても、またこうやって見れてウレシーです。PS小説部のパスワードがわかんなくて更新できません・・

投稿: miyu-sakura | 2006年4月29日 (土) 08時12分

新米天気職人の少年、可愛いわぁ。私の頭の中には、少し痩せた体つきの中性っぽい少年が浮かんだんだけど・・・。勝手な想像です。
面白かったわ♪runtarouさんらしい気がします。って、これも勝手な思い込みだね(笑)
でも、好きだわこういう話!
さぁ、私も頑張って書くど~!!

投稿: のぐのぐ | 2006年4月29日 (土) 08時37分

いいものだなんて・・・。
照れちゃいますぅ。
嬉しいですありがとう!!
いや~時間はね、普通の主婦がしなければいけないことをやめて、作ってます^^;
つまり私は、旦那と子どもを持つ独身女性です。

投稿: miyuさんへ | 2006年4月29日 (土) 09時31分

本当は、もっと少女マンガタッチで書こうと思ったんだけどネ。
下書きなしで、直接書き込んだのよ。
初めての体験。
だからおしまいまで書くことになっちゃったんだ。
(聞かれてもないけど裏話)
少年…。実は人物像が浮かばなかったのだぁ!!
(そんなのアリ?)
けど、きっと綺麗な顔立ちしてるんだよ。そして、優しい。
(私の勝手な想像)
早くのぐりんのが読みたいわ(^0^)

投稿: のぐりんへ | 2006年4月29日 (土) 09時40分

やっと読めた!ホント。どうしたらこんな時間作れるの?教えてーー!!!
こうゆう形になるとは、ちとビックリ。可愛いお話だよね♪
殿お得意?の。
しかも下書きナシ???
殿。アナタには頭が上がりませぬ!

投稿: 羽音 | 2006年4月29日 (土) 21時47分

いやぁ。あんまり褒めると、runtarouは鼻が伸びます?
有頂天です。
ストーリーはね、
できるだけ誰も思いつかないものを・・・って、それしか考えてないです。
そこに時間がかかります。
すごい探ります。
歌詞の中のどこに焦点を当てるか。
歌詞に何を感じてみるか。
それさえ絞れれば、後は言葉を乗っけるだけ。
ただ、言葉を選ぶのにも時間がかかるなぁ><;
イメージに近い言葉を探る作業…。コレが一番大変かも…。

投稿: ネエさんへ | 2006年4月29日 (土) 23時08分

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